“The Others” a parallel exhibition of Artissima in Torino Italy.

106,500,000米ドル、もはやゼロが多すぎて理解が難しいがこれは2010年にクリスティーズオークションハウスによって売られたパブロ・ピカソによって描かれた『ヌード、観葉植物と胸像』という作品である。その値段は日本円にして100億円以上である。芸術作品を売る場というのは上記に挙げたようなオークションだけにとどまらずギャラリーに所蔵しての実店舗販売、オンラインギャラリーによるネット通販のようなものから、実際に作家のアトリエに訪れて直接作品を購入するなど多岐に渡る。今回はその中でも最も多くの人、作品、そして金額が動く場、アートフェアについて東京を拠点とするARTnSHELTERが行っている活動、また考察を踏まえ紹介していきたいと思う。

 

まずそもそもアートフェアとは何か。それはアートの見本市であり、車で言う所の 東京モーターショー、ファッションで言う所のパリコレ、食で言う所の東京ラーメンショーである。一つの会場に多くのお店が集まり、短い期間(大概3日程度)にお客さんを沢山集め、売ることを目的としたイベントであり、大きなアートフェアは世界各国様々な時期に行っていて、大御所から若手、絵画から彫刻、様々な形態の作品が観れる活気にあふれた楽しいイベントである。来場者は超がつくほどの億万長者から、観光の一環として単純に作品を見に来た学生などこれまた様々な人が訪れる大きなイベントになっている。

 

その中でも特に有名なArt Basel(アートバーゼル)は毎年スイスのバーゼルで行われるアートフェアであり300近くのギャラリーが集まり4千近くの作家が作品を展示し、7万人を超える来場者が展示を見に、もしくは買いに来る場になっている。実際に今年度のArt Baselに行ってみたが街全体が非常に盛り上がっていて、メインの会場の他に様々な企画展、小中規模のアートフェアが同時期に開催されているため一個人が観光としていけば十二分の経験ができる。

では出展する側はどうなのであろう。

 

基本的にArt Baselほどの大規模なアートフェアになると大きな会場の中にギャラリーごとの 出展ブースがあり、一個人の作家が展示、販売をしていることは殆ど無い。ここで言うギャラリーとは作品の販売仲介業者である。有名なギャラリーになるとお抱えの作品は名だたるものばかりで、それこそ最初に挙げたような何億、何十億といった価格帯の作品を扱っている。もしアートフェアに出展したいのであれば、まずは自分の作品を権限のあるギャラリーで扱ってもらうのが一番効率の良い方法になる。権限のあるギャラリーというのも、良い作家を、良い価格で、良い場所に売ることのできるギャラリーでなければ、大きなフェアに出展するチャンスが無いからである。そもそも大きなフェアはギャラリーとしての出店料におおよそ300万円かかる、一つのブースと言っても大小あるが、40平米位が平均的なサイズである。その中でどのように作品を並べるかは色々あるにせよ、精々飾れて10作品ぐらいであろう。展示場がどこであれ輸送費はかかってくるが、またその展示会が国外であれば輸送費は馬鹿になら無い。高価な美術品となれば特別な輸送業者を使って普通の10倍もの料金を払いさらに保険にもかける。その他会場の人件費やら広告費やら、、、。大金を払って作品を売るのだから、ギャラリーも本当に売れる、もしくは売りたいと思う作品だけを扱う事になる。

 

そうなってくると学生上がりの若手はよほど天才的な才能と、宝くじに当たるような巡り合わせでそのようなギャラリーの御眼鏡にかない、扱ってもらうしか大きな見本市に出るチャンスは無くなる。

 

では結局アートの世界は ごく少数の権限者によって回されている排他的な環境なのだろうか?

 

先にも述べたように、アートフェアは大規模なものだけに留まらず中規模、小規模なものが開催されている。言って仕舞えば、美大などで行われている芸術祭も立派なアートフェアである。さらに、そういった小中規模のアートフェアは競争を強いられるため、常に独自性と創造性を持って他のフェアとの違いを出し、ある種、血の気が多い若手のギャラリストやイベント運営陣、作家が集まる面白い空間になっている。また、そのような規模感のフェアは作品を売ってやろうというより、育てていこう、一緒に盛り上げていこうという雰囲気もあるのが特徴でもある。

 

ARTnSHELTERは今年Art Baselの展示期間中に別の小規模展であるCamp Baselに参加してきた。本展のArt Baselが行なわれている期間中という事もあり街全体でアートフェアと捉えられる事が多く、そういった場に参加できた事を非常に嬉しく思う。またそこで出会った人々は確実な資産となり、次のステップへとつながっている。

 

そういった人との会話、ともに頑張って活動していこうという同業者が今年は11月にトリノで行われるArtissimaへアプローチするチャンスをくれた。当然ながら当社の経費では300万円も払ってブースを確保できない。となる他のギャラリーとの共同出展になる。聞こえはいいが、要は居候みたいなものだ。もちろん本展ではなくパラレル展。だからこそやれる事、挑戦できる事が多くある。

 

主体となるギャラリーの会場費は2000ユーロ、出展料は作家一人につき400ユーロでもちろんその上に輸送費、渡航費、宿泊費諸々のしかかってくる。概算で出すと日本から作家を持って行き展示を行うと30〜50万円は最低でもかかってくる。そして売れた作品は50パーセントが向こうのギャラリーの取り分となるわけだからこちらとしては最低でも一作品1500~2000ユーロで売りたい。しかし、同じ会場の他のギャラリーから比較して、自分だけべらぼうに価格を上げるわけにはいかない。1000ユーロを超えると売れないからやめてほしいとも言われた。ただ、これが中規模アートフェアの面白いところ、自分を開催前からしっかり売り込む事が出来れば、ただの居候から共同主催者に立ち位置が上がる。結果出展料は作家数に関係なく400ユーロ、向こうの取り分を30パーセントまで抑える事ができた。その代わり、現地ではしっかり働かなければならない。当然である。 共同主催者という事で、会場のコンセプトから告知活動、アーテイストのマネージメントまで一緒に行う事になる。しかし、これも大きなチャンス。今度は少しずつ自分の色を入れる事ができる。そうすると、その展示を見に来た人からまた自分の頑張り次第で次のステップを与えられる。つまり、もう少し大きな金額での勝負ができる場に行ける。そのような小さなステップの積み重ねが最初に掲げた馬鹿高い金額のカラクリでもある。

 

やり続けなければ結果が出ない世界であり、逆にいうと続ければ結果の出る世界になっている。

 

来年度はマドリードのARCO、リオンのMirage Festival、香港アートバゼルと大きな競争に揉まれながら当人は輸送費を浮かせる為に「なるべくスーツケースに入る大きさでお願いします。」と、作家にお願いしながら世界を回るのである。

リンク

Art Basel: https://www.artbasel.com

CampBasel: http://www.campbasel.com

Artissima: http://www.artissima.it/site/

The Others: http://www.theothersfair.com/en/

ARCO: http://www.ifema.es/arcomadrid_06/

Hybrid Art Fair: http://www.hybridartfair.com/en/